補助金でPOSレジを導入。インボイス制度で何が変わる?どんな補助金?手順など解説
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POSとは、Point of Salesの略称で、主に小売店舗や飲食店などでの決済、販売管理や在庫管理を行うためのシステム。現在では、キャッシュレス決済の普及により、多くの店舗で利用されているが、POSレジの導入には初期費用やランニングコストがかかるため、中小企業などでは導入に踏み切れないという声も少なくない。今回はIT補助金を活用し、POSを導入する手順や注意点などを解説していく。
新しい制度が導入されるたびに補助金も用意される
日本においては、新しい税制度が採択される際、企業や個人に対し、補助金が交付されることが一般的。このような補助金は、税制度運用で発生する経費の軽減や新制度の理解を深めるための研修などに充てられ、2023年10月から施行されるインボイス制度も例外ではない。
補助金×POS導入のメリットとは?導入金額が半額となることも
補助金には一定の条件や要件、申請手続きが必要であり、交付される金額が限定される場合もある。導入には、その必要性や効果を十分に検討した上で、適切な措置を講じなければならない。まずは補助金を活用したPOS導入メリットについて説明する。
1. 補助金の支給
IT補助金を利用することで、POS導入にかかる初期費用やランニングコストを抑えることが可能。さらに、IT補助金には、導入に必要なハードウェアやソフトウェア、機器交換費用についても支援対象となるものがあり、補助金を受けることで資金の調達に苦労することなく、POS導入が可能となる。
今回紹介する「IT導入補助金」を利用した場合、最大で導入金額の約半分〜3分の2の補助が受けられ、投資に大きな費用をかけられない中小企業にとっては、ぜひとも活用すべきだろう。
2. 業務の効率化
POSを導入することで、会計作業がスムーズになり、業務の効率化が図られる。また、在庫管理や顧客管理などがシステム化されることで、ヒューマンエラーの防止にもつながる。労力を削減することで、スタッフの負担も軽減し、省人化を図ることが可能。
インボイス制度の施行&POSシステムへの補助金の詳細とは
前述したインボイス制度は、発表当初こそ個人事業主に打撃を与えると賛否両論を生み、話題となった。まずはPOSにも影響を与えるインボイス制度について解説する。概要は下記の通り。
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インボイス制度とは?電子データでのやりとりが義務化
「インボイス制度」とは、2023年10月1日より導入が決定している「適格請求書保存方式」のことで、売り手が買い手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えることが目的。日本国内で行われる取引において、請求書の発行が必要な場合、それを電子データで送信することとなる。
従来の紙媒体での請求書の発行や郵送によるやりとりが不要になり、業務が効率化。また、電子データでのやりとりによって、請求書の誤りや漏れがなくなり、請求書処理のミスが減少するというメリットがある。
課税売上高が1,000万円以上が対象。個人事業主が厳しい状況に
課税事業者は取引先から請求書を受け取り、その請求書に基づいて仕入税額を計算し、申告する。一方、請求書を発行する側である課税事業者は、請求書の発行や電子データの提供などの手続きが求められる。したがって、インボイス制度では、取引先や請求書の発行に関わる企業は、税務署に登録する必要があり、登録しない場合は税金の控除を受けることができない。
インボイス制度が適用されるのは、課税売上高が1,000万円以上の事業者。個人事業主や中小企業など課税売上高が1,000万円未満の免税事業者は、インボイス制度が適用されないため、インボイスを発行することができない。
そのため、インボイス制度導入の影響が大きいとされているのは、飲食業や小売店、個人事業主など。小売り業では、免税事業者である個人から商品を仕入れる場合も多いため、消費税の納税負担が大きくなる。課税売上高が1,000万円未満で、消費税の納税義務が免除されているクリエイターなどの個人事業主も厳しい状況になるとされている。
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電子データによるやりとりが義務化されれば、自ずとPOSへの移行は進む。そのため、円滑な新制度導入のため、国が企業に対して補助金が拠出するのは、自然な流れとも言えるだろう。
POSの補助金を受けるためには、一定の条件が必要であり、例えば導入するPOSが、国が指定した製品・サービスだけが補助金対象となっている。つまり国が認可していないPOSであれば、補助金を受け取ることはできない。
POS導入のための具体的な補助金とは?どんな種類がある?
では、インボイス制度に対応するPOS導入には、どのような補助金が適正なのか? 現状は大きく2つあり、1つが一般社団法人サービスデザイン推進協議会による「IT導入補助金」と、もう1つが全国中小企業団体中央会による「ものづくり補助金」。その他、各地方団体が提供する補助金もあるが、地域によって状況が違うため、ここでは割愛する。
ちなみに、ネット上では「業務改善助成金」や「小規模事業者持続化補助金」といったケースも散見されるが、前者は人件費の増加が条件、後者はコロナ禍での対応であるため、決して適しているとは言えない。
ここでは「IT導入補助金」と「ものづくり補助金」の概要を説明する。
①「IT導入補助金」(公式HP)……中小企業や小規模事業者、会社が抱える問題やニーズに合わせて、ITツールの導入費用の一部を補助することで、業務効率化や売上アップをサポートする制度。条件を満たすと、ITベンダーから提供されるITツールの導入費用の一部を補助される。「通常枠(A類、B類)」と「デジタル化基盤導入類型」の2つがあるが、デジタル化基盤導入類型の方がベターとされている。
経済産業省が定めるIT導入補助金に認定されているPOS・パワクラの担当者によれば、「通常枠はあくまでも人件費の向上が目的。仮に補助金を受けられても最終的には従業員の賃金を上げることが求められますので、経営にも直結してきます。しかし、デジタル化基盤導入類は、そもそもがITの導入が目的ですので、現状の規模感でビジネスを続けるには、そちらの方が適していると思います」と話す。
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)の対象ITツールは、下記の図の通り、会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフト。また、クラウド利用料やPC・タブレット、レジ・券売機等のハードウェアの導入費用も補助対象となっている。
②「ものづくり補助金」(公式HP)……革新的なサービス・商品の開発や設備投資などを行った際に、費用の一部を支援する制度。POSの導入も対象であり、補助金の詳細は各運営先に問い合わせる必要がある。パワクラ担当者は「ものづくり補助金とIT導入補助金では、申請方法も大きく異なります。大規模な設備投資も含めますし、支給される額が違います。新たな事業プランを立てて、申請する必要があり、会計士や税理士、銀行などが代行するケースが多いですね」と話す。
小売り業の補助金活用の成功例〜IT導入で生産性が20%向上
ここでIT導入補助金の公式サイトで紹介されている補助金の活用に成功例を紹介する。
東京の清水建材工業株式会社では、業務担当者の交代による事務処理の遅れが発生し、日々仕入価格が変動するため売上・仕入単価の推移把握が難しくなっていた。それに加え、オリンピック需要に対応した商材を振り分ける必要性が生じ、取引に関する情報や社内のルールの統一化、業務を引き継ぎやすい環境を整えることが課題となっていた。
そこで、IT導入支援事業者と共に業務フローを確認し、課題を把握。時間短縮効果を見込める「販売管理システムBセット」(カシオ計算機株式会社製)の導入を決定。取引先(ゼネコン)毎に異なる商習慣の流れを一元化し、情報の集計・分析し、課題であった引き継ぎしやすい環境を整備した。
それによって経営の全体像が把握できるようになり、売上の多い得意先の需要予測や仕入単価の推移、最適な仕入先の選定など必要情報を集約。売上アップにもつなげることができ、今後は粗利の向上に取り組んでいくという。さらに情報分析を行い、将来的には配達ルートを自動で最適化してくれる運搬向けシステムも検討するとのこと。
数値で見れば、導入以前と比べ、生産性が20.47%向上、勤務時間が1.71%短縮、売上においては15.43%増加という結果をもたらすこととなった。
IT補助金の申請方法、最初にすべきはIT支援機関に相談
具体的な申請方法については、詳細を公式サイトで確認してもらいたいが、順序としては上記の成功例にもあったIT支援機関とともに適切なITツールの選択が必要。パワクラを取り扱うタスネットでは、これまでに約30件の補助金申請を手がけてきたこともあり、フローも熟知している。
前出のパワクラ担当者は「国に認可されているIT事業者が申請しなければならず、弊社であれば可能です。何も難しいことはありませんし、可能な限り、サポートさせていただきます。導入費用も計算できますので、実際にお支払いする金額もお伝えできると思います」と説明する。
注意すべきは、補助金が支給されるのは導入以降となるため、事前に一時金が必要。知らずに進めてしまい、後に資金ショートとならないよう気をつけていただきたい。
IT補助金を活用したPOS導入の注意点。スケジュールをチェック!
1. 補助金の条件を把握する
国からの補助金は、特定の条件を満たすことが必要。例えば、小規模事業者向けの補助金であれば、従業員数や売上高の規模が一定以下であることが条件となる場合がある。そのため、補助金の条件を事前に確認しておくことが重要。
2. 申請時間の遅れ
IT補助金の申請期間に制限があるため、申請を遅らせると補助金受給ができない場合がある。申請する際は、申請期間内に準備を進めたい。IT導入補助金・公式サイトのスケジュールはこちら。
3. POS導入・設置費用の見積もり
補助金を受けるためには、POSシステム導入に必要な費用の見積もりが必要。しかし、見積もり額の設定が高すぎると、補助金が受給できない場合があり、事前に適切な見積もりにしなければならない。POSシステムを選定する際には、利用する業種や店舗の規模に合わせたシステムを選ぶことが重要。また、導入前にデモや試用を行うことで、自社に適したシステムかどうかを確認できる。
4. ROIを見据えた運用計画を立てる
POSシステムを導入することで、業務効率化や顧客データの蓄積などのメリットがあるが、当然ながら費用がかかる。導入前にROI(Return On Investment)を見据えた運用計画を立て、コスト効率の高い運用を目指すことが重要。
スケジュールについては、採択を受けてから6ヵ月以内にIT導入を実行しなければならず、その後、IT支援機関から請求書をもらい、口座内容を国の機関に報告。2ヵ月以内に支払われるケースが多い。
パワクラ担当者は「インボイス制度の影響もあり、現在IT導入補助金は申請が通りやすい印象です。補助金についてわからないことがあれば、気軽にお問い合わせください」と語った。